ここから本文です

ICT理論でまちおこし、崇城大教授らが熊本の商店街に放送局

産経新聞 6月19日(金)7時55分配信

 熊本市中央区の新市街商店街に、地域活性化の拠点として放送局が誕生した。個人所有の多数のパソコンをネットワーク化することで、スーパーコンピューターに負けない性能を発揮するというICT(情報通信技術)上の理論を、まちおこしに応用しようという取り組みで、崇城大(中山峰男学長)情報学部の星合隆成教授が中心となっている。(南九州支局 谷田智恒)

                   ◇

 飲食店などが並ぶ、にぎやかな商店街。そのビルの1〜2階に今春、崇城大の「SCB放送局 新市街スタジオ」がオープンした。

 ガラス張りで、1階部分は放送スタジオ、2階部分はフリースペースとなっている。スタジオでは崇城大の学生が、地元のプロバスケチーム「ヴォルターズ」の情報を発信するネット番組をオンエア。2階では、IT塾が開かれていた。

 「人を集めるのではなく、人が集まる場所を作りたかった。アイデアや技術を持つ人々が、この場所で自然とつながり、課題解決に向けた何かを生み出す仕組みにしたい」

 こう語る星合氏はもともと、地域活性化や街おこしではなく、コンピューターネットワークの専門家だ。

 星合氏はNTTネットワークサービスシステム研究所の主幹研究員だった。平成10年、ネットワーク理論「ブローカレス理論」を提唱し、世界的に注目された。これは、大型のサーバコンピューターを中心にネットワークを構築・維持するのではなく、自立分散する中小型のコンピューターをつなげて、情報をやり取りするという理論だった。

 ブローカレス理論を応用し、NTT西日本は「グリッドサービス」を実用化した。ネットワークにつながった膨大な数のパソコンを活用し、スパコン並みの計算能力を実現させた。このサービスはすでに終了しているが、遺伝子の構造解析や気象予測などが行われたという。

 星合氏はブローカレス理論を、コンピューターネットワーク上だけでなく、人的ネットワークの形成や地域コミュニティーの構築に応用しようと考えた。

 そこで誕生したのが、地域コミュニティーブランド(Social Community Brand、略称SCB)の発想だった。個人所有のパソコンをつないだように、地域おこしに関わる人々が結びつき、自発的に取り組みを進めることで、最大限の効果発揮を図る。また、その取り組みそのもののブランド化を目指す。

 SCBの発想に沿って、すでに全国で50のプロジェクトが動いている。

 例えば、繊維産業の町、群馬県桐生市では「nunotech(布テク)」の名称で活動が始まった。地元のメディア関係者と工業デザイナーらが交流する中で、若者のアイデアを取り入れた「iPadケース」などの商品がすでに実用化されている。

 星合氏は24年、崇城大教授に就任した。崇城大は26年4月、熊本市西区のキャンパスに最新鋭スタジオ「SCB放送局」を開設した。ここを拠点に人的ネットワークがつながりはじめている。「熊本競輪活性化プロジェクト」など、放送局を拠点に学生と地域住民や専門家、自治体職員も参加して、番組制作や情報発信が進んでいる。

 新市街商店街のスタジオは、放送局の第2弾として開設した。番組はインターネットの動画サイトやラジオで配信している。

 地域だけでなく、崇城大の学生にとっても、放送技術習得や、コミュニケーション能力向上などのメリットがあるという。

 星合氏は「ICTの世界の考え方を地域に導入することで、活性化を図りたい。熊本で成功させ、全国へさらに拡大していけば、日本の底力になるはずだ」と語った。

最終更新:6月19日(金)7時55分

産経新聞

  • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。
本文はここまでです このページの先頭へ

お得情報

その他のキャンペーン