ICTの理論を活用した地域活性化で
新しい価値を生み出そう!
- 2016.07.13
- メインテーマ
- 情報学・通信
ICT(情報通信技術)は、今や私たちの暮らしに切っても切り離せないものです。SNSだって、オンラインゲームだって、ICTがなければ存在しません。そんなICTの理論を、地域活性化に利用しようという研究を進めている崇城大学情報学科の星合隆成教授に話を聞きました。
※写真:SCB放送局キャンパススタジオを運営する学生たち
世界が注目したブローカレス理論とは?
スパコン(スーパーコンピューター)というと、国家プロジェクトとして作られるように、多大なコストと時間が必要になると言われていますが、家庭で使っている多くのコンピューターをつないで、ネットワーク上にスパコンを作ってしまうことができるそうです。この考え方の元となっているのが、ブローカレス理論です。
もともとNTTの研究所で25年間、米国のベル通信研究所で2年間、次世代ネットワークやオペレーティングシステムの研究をしていた星合教授は、1998年にブローカレス理論を提唱し、世界で注目されました。ブローカレス理論とは、従来のように大型のコンピューターを中心にトップダウン的にネットワークを構築・維持するのではなく、自律分散する小型コンピューターを数多くつなげて情報をやりとりするというもの。この理論は、宇宙開発の研究や遺伝子研究にも生かされたのだそうです。
“モノ”ではなく、“つながり”をブランド化
その後、星合教授はブローカレス理論をコンピューター上だけでなく、地域における人的ネットワークや地域コミュニティづくりに応用できないかと考えました。そこで2011年、「地域コミュニティブランド(SCB)」の発想が生まれたのです。「地域活性化に関わる人たちがブローカレス理論に基づいて自律的にコミュニティを形成し、自発的に取り組みを進めることで、新たな価値が生まれます。その取り組みや”つながり”をブランド化することが目的です」。
この理論を使った実証実験は全国各地で行われることになりました。群馬県桐生市では、古い歴史を持つ織物産業を生かした活動「nunotech(布テク)」が生まれ、生産者や若者、メディアなども参加し、さまざまな新商品も誕生したそうです。「大切なのは、商品ではなくその活動そのものがnunotechとしてブランド化されていることです。ああ、あの”つながり”ね、と言われるように!」ほかにも、全国で約50のSCBプロジェクトが進行中だそうです。
学びの場となっている新市街スタジオ
崇城大学では、ブローカレス理論を使った地域コミュニティブランド(SCB)の実証実験を行うため、2015年、新市街商店街(熊本市中央区)に「SCB放送局 新市街スタジオ」をオープン。星合教授を中心に、専門家や自治体、テレビ局・ラジオ局・新聞社・雑誌社などのメディア企業なども参加しながら、学生や地域の人々の活動をサポートしています。この場所を拠点に、健康やICT、農業などテーマごとに30のプロジェクトが誕生。スタジオ運営のための崇城大生による学生ベンチャー会社(http://www.conceptlab.jp/)も設立され、学生主体の運営が行われています。中には地域活動はもちろん、メディアに興味のある学生たちも少なくなく、また、学生たちは作成したコンテンツをコンテスト等に積極的に出品するなど、貴重な学びと成長の場ともなっています。
距離を縮めるための通信手段として生まれたバーチャルな世界のICTを、リアルな地域の活性化に役立てようという、発想の転換から生まれた地域コミュニティブランドの研究により、これまでにない新しいビジネスモデルが生まれるかもしれません。