(報道発表資料)
2004年4月27日

日本電信電話株式会社
特定非営利活動法人桐生地域情報ネットワーク


「ひとづくり」「まちづくり」のコミュニティ形成を実現する
産官学地域協働のP2Pコンソシアムを設立。
先進のP2P技術「SIONet」を使用した
自律分散協調型ネットワーク運用に関する共同実験を開始


 日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:和田紀夫)と特定非営利活動法人桐生地域情報ネットワーク(以下KAIN、事務局:群馬県桐生市、理事長:塩崎泰雄)は、NTTのP2P(※1)技術「SIONet」(Semantic Information Oriented Network)を用いて、地域活性化・地域情報化を柔軟かつグローバルに展開するための自律分散協調型ネットワーク運用に関する共同実験を5月1日より開始します。
 本実験では、KAIN共同実験会員として登録された一般の利用者、およびSIONet上でサービスを開発するサービス提供者をユーザとし、KAINが提供するロケーション(運用サイト)と家庭・オフィスにSIONet動作端末(パソコン等)を配置してコミュニティを作ります。(図1)。ユーザは、アプリケーションソフトを自身が所有するパソコンにインストールしてインターネット経由(汎用なインターネットプロトコル(http)を利用したインターフェース)でコミュニティに参加します。
 コミュニティの運用では、KAINが中心となって設立した産官学地域協働のKAIN-P2Pコンソシアム(※2)(図2)が、コンテンツの企画からアプリケーションの開発、実証実験、実験結果の評価までを担当し、P2Pシステムを地域に取り入れた場合の自律分散協調型コミュニティモデルの形成について検証・評価を行います。


1.共同実験の背景と目的
 「情報化を通して、ひとづくり・まちづくり・お手伝い」をスローガンに活動するKAINは、その実践と研究の中から21世紀の社会基盤となるIT(情報技術)とヒューマンネットワークを融合させた「新しい隣組」(※3)の理念を提唱してきました。それと共に、この理念を実現するためのコミュニティ・プラットフォーム(Community platform)、そこに醸成される「地域の文化遺伝子の蓄積」としてのコミュニティ・アーカイブズ(Community archives) の概念を提案し、それらの実現に向けた活動の一環としてKAIN-P2Pコンソシアムを設立しました。
 一方、NTT研究所は、「非集中」「自己組織化」といった21世紀の情報システムや組織のあり方の新たな潮流を先取りするものとして、ゆるやかな連携・自己増殖性・ブローカレス・自律分散協調・局所性・連鎖反応など、人間の社会活動を情報化技術として具現化した世界初のP2P技術「SIONet」を開発し、新しい情報発信システムの創出に向けて研究開発を進めてきました。
 そしてこのたび、SIONetがKAINの目指す「まちづくり」にとって極めて有効なコミュニケーションツールであるとの考えのもと、NTTとKAINの役割分担に基づく共同実験の実現となりました(図3)。
 本実験は、KAIN が運営するKAIN-P2Pコンソシアムを基に、これまで培ったネットワークを基盤とし、SIONetプラットフォームやアプリケーションの利活用を通じて、人と人をつなぐ真のネットワーク技術の醸成を目的とします。また、実現した機能およびシステムを実フィールドで実験的に運用することにより、利用者の意見やシステム運用データを収集し、さらなる機能拡張・システム拡張への改善研究も行います。


2.共同実験の内容
 本実験では、提供する具体的なコミュニティスペースとして、2つのプロジェクトを、自律分散協調型P2Pネットワークの本格運用に向けた検証を行います。

(1)アドホックモール
 アドホックモールは、個性豊かな工芸作家自身が自主的・自律的に参加して、創発・運営されるコミュニティです。作家一人一人が、ストアページを持ち、メンバ同士でお店コミュニティを生成できます。また、購入者(モール利用者)がパソコンだけでなく携帯電話からも利用できて、モールへの意見や感想が反映されるシステムを目指しています。それにより、出店者である作家と利用者が一体となったコミュニィティの実現が可能です。さらには、コミュニティビジネスのモデル形成にも役立つ可能性を秘めていることから、桐生地域の活性化にも役立つことが期待されています。実験では、自発的情報発信のインセンティブの検証及び、P2P型のコミュニティビジネスモデルが成り立つか検証します。

(2)ワイン日記
 上記プロジェクトに先駆け、ワイン日記プロジェクトを実施します。消費者、生産者・ワイナリー、流通業者、酒屋、ワイン評論家などがメンバとなり、自主的・自律的に創発・運営いたします。このプロジェクトでは、趣味や趣向におけるコミュニティがP2Pを利用してどのように形成されていくか検証します。


3.共同実験の役割分担
(1)NTT
P2Pプラットフォームソフトウェアの提供を中心に、
共同実験で使用するSIONetソフトウェアの提供
共同実験システム構築・運用技術支援、コミュニティ創造の技術的支援
共同実験構築システムの技術的データの収集と分析および評価
を行い、新しいコミュニティ形成技術、サービスの創造技術の研究を進めます。

(2)KAIN
これまで培った「ひとづくり」「まちづくり」の知恵を活かし、
システム構築に必要なコミュニティ形成ノウハウの提供とサービス創造
システム構築およびサービス運営
サービス・システムの運用面・ユーザ利用面の評価
を行い、これまでの活動をより一層推進します。


4.共同実験の概要
(1)共同実験期間
 平成16年5月1日〜平成17年3月末日

(2)パソコン利用の際のユーザ端末条件(図1参照)
対応機種:PC/AT互換機
対応OS:Windows XP/Windows2000(日本語版)
CPU:Intel Pentium 500MHz以上
メモリ:最低値128MB以上(推奨値256MB以上)
ハードディスク:空き容量70MB以上
ネットワークインタフェース: ネットワークインタフェースカード必要
(モデムまたはイーサネット10/100M)
画面サイズ:1024×768以上

(3)ホームページ
共同実験概要を下記ホームページにてお知らせしています。
http://www.p2p-conso.jp


5.SIONetの特徴
 SIONetはNTT研究所が開発した世界初のP2Pプラットフォームであり、ゆるやかな連携・自己増殖性・ブローカレス・自律分散協調・局所性・連鎖反応など、人間の社会活動を情報化技術として具現化しています。
 ユーザがフォーマットに従った項目ごとにキーワードを設定してメッセージを送信すると、公開済みのダイジェスト情報の中から該当キーワードを含むものを見つけ、そのダイジェストを公開したユーザだけにメッセージが通知されます。これにより、他人の目を意識することなく、自分の好きな内容で自由にコミュニティを作成・運営していくという自律発展型のコミュニティモデルを実現することができます。
 世界初のP2PプラットフォームであるSIONetは、個人が主体となって自由で多彩な情報送受をサポートするサービス、企業向け共同作業支援サービス、分散コンピューティングなど、多彩なP2Pサービスに適用可能です。


6.今後の予定
 実験終了後、NTTは、共同実験で得た知見をもとに、さらにP2P技術イノベーションに努め、新しい情報発信システムの創出に向けた取り組みを推進していきます。
 一方、KAINでは、検証結果に基づいて多くのまちづくり組織にSIONet導入を図り、本実験の2つのプロジェクト以外に計画している多彩なコンテンツで、さらなる応用事例の拡大と利活用の改善研究を行う予定です。



<用語解説>
※1 P2P
 Peer to Peer(ピア・ツー・ピア)の略で、ピアは「仲間、同等」などを意味し、端末間あるいはユーザ間で文字通り対等な通信を行う。P2Pシステムは、中央集権的ではないボランティアネット的なものとしての発展が望めるため、上意下達ではないフラットな組織に適合しているといわれ、サーバを介さない新しいインターネットの利用法として注目を集めている技術。サーバが“主”でクライアントが“従”となるクライアント・サーバシステム方式と対比して用いられる。

※2 KAIN-P2Pコンソシアム
 産学官と地域が一体となった産学官地域協働のP2Pコンソシアム。大学(群馬大学、早稲田大学、東京農工大学、多摩大学など)、行政(群馬県、桐生市など)、NPO(FUSION、KAINなど)のほか、任意団体(電子情報通信学会コミュニティ活性化研究専門委員会など)、協賛企業(株式会社ビットメディア、株式会社アンクルなど)が参画する。KAINによる運営のもと、運営委員会をコアとし、評価部会、コミュニティ運営部会、デベロッパーズ部会、サイト運用部門、企画広報部門、P2Pコンソシアム事務局に分かれて活動している。

※3 新しい隣組
 従来の「地域」を町内単位に細分化したときの最小単位の町内コミュニティ・プラットフォーム。この「新しい隣組」が自律しながら協調していくことで地域のネットワークを形成する。



図1:共同実験システムの概要
図2:コンソシアム組織図
図3:共同実験に関わる役割分担




【本件に関するお問い合わせ】
日本電信電話株式会社
情報流通基盤総合研究所
企画部 広報担当 遅塚(ちづか)、佐野、井田
TEL:0422-59-3663
E-mail:koho@mail.rdc.ntt.co.jp

特定非営利活動法人桐生地域情報ネットワーク事務局
TEL:0277-20-7800
E-mail:npo@kiryu.jp


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