ここから本文です

人を結ぶコンピューター理論 熊本・崇城大の星合教授が研究

11/6(水) 7:55配信

産経新聞

 ■起業促進や地域活性化、コースを来春新設

 コンピューターの理論を応用し、アイデアや能力を持つ個人同士を結びつけて、地方発の起業や地域活性化を促進する試みが、熊本市で進んでいる。来春、市内の崇城大に理論を学ぶ新たなコースが誕生するほか、ソフトバンクなど県外企業も参加し、学生や市民向けの講座やワークショップを開く。関係者は「まず熊本で実績を残し、全国に取り組みを広げたい」と語った。(九州総局 中村雅和)

 旗振り役は、NTT出身で同大情報学部の星合隆成教授だ。星合氏はネットワーク技術の専門家として、ピア・トゥー・ピア(P2P)の研究で注目を集めた。

 P2Pは、複数のコンピューターに分散して仕事をさせることで、スーパーコンピューターに匹敵する処理能力を可能する。その技術は、仮想通貨のビットコインの取引記録管理にも使われている。

 星合氏はこのネットワーク理論を応用し、人や組織の最適な結びつきを目指す「地域コミュニティーブランド(SCB)理論」を提唱した。「長年、コンピューター同士をどう結びつけるかを研究していた。P2Pが社会に浸透し、次は人間同士や組織をどうつなぐかに、興味が移った」と語った。

 目標ごとに個人や組織が持つ能力、実績、資金など、限定した項目を突き合わせ、最適な結びつきを模索する。

 「最先端の技術革新は、世界中で大企業がしのぎを削り、地方から入り込む余地は極めて小さい。しかし、地域にあるヒトやモノを新たに結合させ、新たな価値を生み出すことはできる」

 星合氏は、具体例として「ポケットベル」を挙げた。「サービス提供側は、単なる呼び出しツールと考えていた。それが女子高生と結びつき、コミュニケーションツールに生まれ変わった。このような革新は誰だって起こすことができる」と分析した。

 星合氏はすでに、各地で成果を出した。群馬県桐生市では、地場の繊維産業の関係者を、それまであまり接点のなかったデザイナーや学生と直接結びつけたことで、ニーズとアイデアに気づき、iPadケースなどヒット商品を生んだ。

 また、農林水産省の組織改革や、国土交通省による「道の駅」の連携策にも取り入れられた。民間企業を含め全国で50以上のプロジェクトが進むという。

 星合氏は、SCB理論の普及を目指す。崇城大は今年1月、星合氏が所長を務める「SCBラボ」を発足させた。さらに令和2年度に新設される情報学部未来情報コースで、SCB理論を学生に教える。授業では、ソフトバンクなど企業担当者との実地研修も予定する。

 学外では、熊本市中央区にあるシェアオフィス「ザ カンパニー熊本」で、講座やワークショップを開く。関心のある市民が、週末を中心に、SCB理論の基礎を学んでいる。

 星合氏は「われわれには他にはない理論がある。日本の将来に不可欠なイノベーションを担える人材を育成してみせる」と語った。

最終更新:11/6(水) 7:55
産経新聞

こんな記事も読まれています

  • ※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。
あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ

本文はここまでです このページの先頭へ

お得情報

その他のキャンペーン